曰記

曰記

2010年7月8日

今日の午前の会議で、僕の7月一杯での異動(というか退職)が認められ、8月から別のところで働くことになりました。また助教をやります。

博士課程に在籍していた頃、当時世界最高速だった地球シミュレータのアカウントをもらう機会があったにもかかわらず、D論で忙しくてほとんど触れませんでした。いつかでかい計算をしようと思っていたところにこのプロジェクトに誘われたので名古屋から東京に異動しました。僕としては「大規模計算をしに情報基盤センターに行く」というのはきわめて自然な発想だったのですが、パーマネントの職から任期付きの職に移ったことに対して、「なんか名大で嫌なことがあったのか」とか「問題でも起こしたのか」とか考える人が結構いたようです。今回も任期途中で異動することと、講師から助教になることで降格人事がどうとかワイドショー的な勘ぐりをする人がないよう、この異動についてちょっと書いておきます。

まず、研究者が異動するのは研究のためです。ポストを取るために研究するのではなくて、研究するためにポストを取るわけです。少なくとも僕は研究をする上で雑用の有無は気にしますが、肩書きはまったく気にしてません。家族をかかえて生活をしていかなければならない以上、そんなことはきれいごとだとは分かってますが。

公募の採用確率から考えて3年で出て行くためには、最低でも1年くらい公募を出し続ける、要するに2年目くらいから応募しはじめる必要があろうかと思います。今回は幸運にも早めに採用が決まり、プロジェクト在籍2年ちょうどで出て行くことになりました。ちょうどよかったのではないかと思っています。

研究面では、なんとか大規模MDのコードが完成し、1万プロセス程度のMPIで数億粒子規模の計算が気軽にできるようになりました。当初の「大規模計算をやろう」という目的は達成したわけです。唯一このプロジェクトで心残りがあるとすれば論文がほとんど書けなかったことですが、D論でたまった研究を名大にうつって最初の2年くらいで論文に吐き出したように、今回も異動後に吐き出していくことになろうかと思います。

パーマネントから任期付きの職にうつる、ということでは、近い知り合いだけでも3人が「Just for fun」で任期無しポストから任期付きに異動しています。そのうち一人はアメリカでポスドクをやってて、「渡辺もきっと(アメリカのポスドク生活が)楽しめると思うよ」とか言ってました。僕は研究者はそんなもんだと思ってます。

普通の社会で「○○省のエリートコースにいた人が突然お好み焼き屋を始めた」とかそういう時に「なんかあったのか」と思うのは普通だと思いますが、研究者が任期無しのポストから任期付きにうつったくらいで変な噂をされるのはちょっと悲しい。今度の職は任期5(+5)年ですが、5年くらいで異動すること念頭においています。もちろん良いタイミングでポストがあることが前提ですが、やりたいこととのマッチング次第ではアメリカに行くかもしれないし、日本でまたポスドクをやるかもしれません。ドイツにも行って見たい。そのとき、どんなに常識からはずれたと思しき行動をとっても、「あぁ、なんかやりたいことがあったのかな」とか思ってもらえると幸いです。

ちなみに正規職員からポスドク(特定有期雇用職員?)になったことで親は心配したらしい。それはちょっと反省。今度は任期付きだけど(たぶん)正規職員なのでちょっと安心したそうな。次の場所でもスパコンの世話をします。「どうせ世話をするなら正規の職責をもって世話をしたい」というのも異動の動機のひとつになってます。